人口の話は筋が悪いかも〜佐久穂町は75年間ずっと人口減っていた〜

2045年、佐久穂町の人口は6,700人くらいになるそうです。
20年後の話ですが、これってけっこうヤバいなとずっと思っててウンウン悩んでたんですよ。
とはいえ、ふと疑問が浮かんだんです。
「そもそも人口が減り始めたのっていつからなんだ?」
「減り始めた時点で“これはまずい”って思わなかったのか?」
ってことで、佐久穂町の人口ビジョンを見てみました。
(→佐久穂町人口ビジョンPDF)
すると…なんと1950年から、75年間ずっと人口が減り続けているという事実が発覚。
日本全国が「人口増の黄金時代」に湧いていたあの頃に、佐久穂町はゴリゴリに減っていたのです。
日本の1945年以降の人口の増加の速度、知っていますか?
尋常じゃない角度で増えています。ほとんど垂直。1年間で100万人くらい増えます!これが人口ボーナス!
佐久穂町もそれと同じとは言えないまでも、人口ボーナスの恩恵期ってのがあると思ってたんです。ですが、
1950年:18,621人
1970年:14,969人
最初の20年は5年ごとに1,000人ずつ減ってます。
戦後の経済成長で、東京とかに出てったんでしょうね。時代ですね。
その後もジリジリ減って、2000年(日本の人口ピーク年は2004年)には13,622人。
人口が増えたことは、実は一度もありませんでした。泣
なんなら近隣の佐久市は1980年から2010年にかけて人口が10%くらい増えていたらしいのに。
てっきり佐久穂町も、微増くらい経験してるもんだと思ってたんですよね…。
ということは、「あの頃は人が多かった」っていう記憶、実は幻想だったのかもしれません。
活気があったのは、若者が割合的に多かっただけ。総数は減ってた。
茹でガエルは、もうとっくに煮えていた
ここまで人口が減っているのに、町の事業は減っていない。
むしろ、種類が増えていたりして、これはちょっと不思議です。
本来なら、人口が減ればやることも(少しは)減る。行政サービスも見直しが入る(はず)。職員数も減る(と思う)。
でも実際には、事業を「終わらせる」「2つの事業を合併する」という判断がされてこなかった。
なぜか。
たぶん、「若い人が増えている」中で、活気があり、色々な要望が生まれて、それに応え続けてきたから。
人口が微減しているその時に、既にお湯の中に入っていたのですね。
その名残が、今もずるずる続いているんじゃないでしょうか。
あとは、町役場の忙しさは人口によるのではなく世帯数によるのではないか、という考えもあります。
人口ビジョンによると、1950年から世帯数については2000年にかけて微増しています。
これは核家族になって世帯が増えたことが影響していると思います。
役場は世帯(家族)ごとの仕事が割と多い、と考えると、仕事は増えてきているという感覚が出てくるかも知れません。
人口の議論、そもそも筋が悪い
ここまで書いてて思ったのは、
「佐久穂町で“人口”を増やそうとすること自体、筋が悪いんじゃないか?」
ということです。
日本全国が人口ボーナスで湧いていた時期ですら、佐久穂町の人口は増えませんでした。
だったら、これから人口が急激に減る時代に入って「なんとか増やそう」っていうのは、やり方が悪いとか気合が足りないって言うのではなく・・・
ポテンシャルがない。
これはもう残念ながら認めざるをえない。
だからこそ、もう「人口」という言葉はやめませんか?
見るべきは「人数」、もっと言えば「○○をやる人数」とか「年齢層ごとの人数」です。
若い人たちを増やしたいなら、そこに向けた資源集中と施策にフォーカスすべき。
総人口を増やそうとするのではなく、戦略的に“誰を”町に呼び込むのかを明確にする。
そして、昔話として語られる「あの頃はよかった」という思い出も、実際には人口が減っていた時代の話。
つまり、真似してはいけない“失敗事例”として見るべきかもしれません。
疑問:どうして「人口」を話題に出し続けてきたのか
75年間の実績があるのに、どうして未だに「人口」などを問題にしているのか。
なんだか、その背景には「使いやすい言葉」ってのが見え隠れするような気がしています。
例えば「佐久穂町の人口を増やすための施策をします。」と言った時に、反対する人、異を唱える人はあまりいないと思います。
佐久穂町の人口が増えるってことは活気づくことだから、いい事じゃん。と思うからです。
もうちょっと詳しく見てみましょう。
佐久穂町であっても様々な属性の方がいます。性別、年齢、仕事、興味のある分野、それぞれ当然異なります。
「人口」というのは住民全員ってことなので、様々な属性を包括しています。
つまりは、誰にとっても「人口を増やす」はポジティブに捉えられ、その発言をする人を"仲間だ"とみなすのです。
全員から仲間だと思われると、その施策を行うコンセンサスは取りやすいですよね。
例えば、このように発言するとどうでしょうか。
「子育て世帯を増やす」「新規農業者を増やす」「移住者を増やす」
この発言に反対する人は、まぁいないかも知れませんが、この発言をする人は"仲間だ"と思う人は先ほどよりも減る事は明確です。
子育て世帯ではない高齢者、農業以外で働いている人、佐久穂町が地元の人、は良くて「関係ないかな」くらいに感じるはずです。
こうなると、コンセンサスをまとめずらくなりますね。
このように、具体的な話をすると利害関係が出てくるんだけど、大きく括っている言葉であるから誰にとっても心地よく聞こえてしまう単語ってのがあると思います。(=バーナム効果って言うらしい)
住民、地域、持続可能、未来の子供、まちの声、ともに考える、誰一人取り残さない、、ってのが思いつく所でしょうか。
こういった単語を一番目立つ箇所(入口)に使う事で、コンセンサスを取りやすい状態になります。
この手法が長い間使われていたのではないかと思います。
結論:もう「人口」じゃなくて、「人数」にしよう
佐久穂町は、75年かけてじっくりと減り続けてきた町です。
この事実を受け止めるところから、町のこれからを考えるべきだと思います。
今回は「人口をどうにかするのは筋が悪いので諦める」って選択が(既に)濃厚になっていたことに驚きました。
人口の話は、得意じゃないのでもうやめましょう。
これからは、「人数」の話をしましょう。